他社の成功事例から自社の新規事業を成功させる!

  • 2019年1月15日

新規事業の成功率はどのような要因に左右されるのでしょうか。それは、成功事例に学ぶのが最も効果的でしょう。成功した新規事業には共通するポイントがあるからです。ここでは新規事業の成功事例を紹介しながら成功の共通性について解説いたします。

写真フィルムの技術で化粧品を開発

富士フイルム株式会社は、その名前が示すようにもともと写真フィルムのメーカーであり、日本のリーディングカンパニーでした。しかしながら、カメラの記録媒体が塩銀フィルムからフラッシュメモリーカードに移行するにつれて、写真フィルムのマーケットの縮小に直面します。この状況を打開するには、自社の持つリソースを活用した業態変換を余儀なくされました。さまざまな試行錯誤の結果、化粧品を開発し、本業のフィルムとはまったく異なる市場に参入することが決まったのです。無謀な判断のようにも感じられますが、なぜそのようなことが可能になったのでしょうか。化粧品の材料は、粒子が細かいほど肌への浸透力が向上します。素材の粒子を細かくする技術は、究極的には原子や分子スケールの微小物体を扱うナノテクノロジーにも通じる先端技術ですが、富士フイルム株式会社にはその技術があったのです。実は写真フィルムと肌の角質はほぼ同じ20マイクロメートルです。つまり写真フィルムの製造技術は化粧品の製造に転用可能なのです。フィルム上に塗布する感光剤の微粒子化の技術では長年の技術的蓄積がありました。その技術を化粧品に応用して新製品開発を成功させています。既存の経営資源の価値を技術的な価値の意味として根本的に問い直し、有効活用可能なマーケットに向けて新製品を開発して成功した事例といえます。(※1)

トイレタリーの技術を応用してペット用品に進出

一般的なユニ・チャーム株式会社の企業イメージは日常生活用品のメーカーといったものが多いかもしれません。たしかに、小売店の店頭に並ぶ商品としては、生理用品やおむつなどがあります。しかしながら、ユニ・チャーム株式会社の業種を専門的に表現すると不織布・吸収体関連製品の専門メーカーとなります。不織布(ふしょくふ)というのは、簡単にいえば「織らない布」のことです。通常の布は動物性や植物性の繊維を紡いで、織ったり編んだりすることで平面的な広がりをもたせています。これを織布(しょくふ)と呼びます。それに対し不織布は繊維同士を融着(熱処理などにより接着する)や機械的・科学的作用で結合・絡み合わせてシートを形成します。この技術は、さまざまな領域で応用可能な汎用技術です。おむつなどの他には、マスクやガーゼなどの衛生・医療分野、土質改良材として土木・建設分野があります。さらに研磨剤や電気絶縁材などの産業資材分野、フィルタなどの空調資材分野などがあります。つまり、ユニ・チャーム株式会社は日常生活で目に触れることは少ないけれど、現代社会生活を維持するためのインフラ構築・維持に用いられる素材を扱うメーカーともいえます。ペット用品に関しては高分子吸収体が封入されたシート(いわゆるペット・シーツ)などの商品化を行っており、主要5大製品(生理用品、生活用品、介護用品、ペット用品、ベビー用品)の一角を担っています。高分子吸収体とは吸水性と保水性をもつ樹脂のことです。最大で自重の1,000倍(純水の場合)の吸収量があり、それを保持して漏らさないため、おむつなどの吸収剤として用いられています。これを近年需要が増え続けている屋内で飼育するペットの糞尿処理アイテムとして商品化しています。(※2)

物流・決済システムを活かして家電修理サービスに参入

一般に、家電が故障した場合、販売店やメーカーに問い合わせ、センドバック修理であれば、自ら梱包・発送するなどの時間と手間が掛かります。宅配サービス大手のヤマト運輸株式会社の社是に「サービスが先、利益は後」というものがあります。社会に必要なサービスであれば、利益は後からついてくるのだから、企業としてまずやるべきことはサービスの質の向上が大切という意味です。ヤマト運輸株式会社には、現場に権限を移譲し、配達員の日々の宅配サービスの現実から問題を発見し、その解決策を提案するという品質改善システムがあります。いわば、日常業務の範囲でそれぞれのメンバーが社内ベンチャー的な思想で動いているともいえます。その結果として生み出されたのが「まごころ宅急便」につづく、「クロネコ家電 Dr.修理サービス」などの付加価値のある宅配サービスです。一般的に家電が故障した場合、販売店やメーカーに問い合わせ、センドバック修理であれば、自ら梱包・発送するなどの時間と手間が掛かります。このサービスは、故障した家電製品について、ヤマト運輸株式会社に連絡すれば、回収・修理・返却をワンストップで行うというものです。取り扱いはパソコンまたはデジタルカメラに限定されていますが、ヤマト運輸株式会社では「パソコン宅急便」と呼ばれる精密機器を安全に搬送するサービスを運用しており、既存のリソースの活用という面でもリスクの少ない事業といえます。ヤマト運輸株式会社ならではのフットワークの良さがよく現れた事業だといえるでしょう。(※3)

全国展開の店舗網を活用してリフォーム業界に参入

“家電量販大手の株式会社ヤマダ電機は、2010年代に入ってから、プレハブ住宅メーカーの買収、住宅リフォーム業者との資本提携などにより住宅産業に進出しています。特に住宅リフォームに特化したサービスに力を入れており、既存の家電量販店網を活用して、販路拡大を目指しています。では、なぜ家電量販店が住宅業界に参入したのでしょうか。その理由は急速に発展し続ける社会のICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)化があります。近い将来にIoT(Internet of Things モノのインターネット)が普及すれば、ほぼすべての家電はインターネットに接続されることが予想されています。IoTとは、簡単にいえば、電気で動く機械をインターネット経由で操作できるようにする技術とその思想のことです。例えば外出先からスマートフォンのアプリを使って自宅にある炊飯器のスイッチを入れたり、冷蔵庫の中身を確認して今夜の夕食の献立を決めたりすることができるのです。家電のIoT化が進むと住宅は情報機器化した家電のプラットフォームとなります。そこで「IoT企業」を標榜する株式会社ヤマダ電機は、家電と住宅が融合する将来性を絶好の投資機会ととらえ、まずは住宅のリフォーム事業に進出したと考えられます。全国に展開する家電量販店舗の一角にショールームを構え、ユーザー目線での営業活動を展開中です。将来的に拡大が予想される新しいマーケットシェアの獲得に向けて、既存の店舗を利用して機能を拡張するという手法はリスク管理としても理想的な戦略でしょう。
(※4)

自社の技術や資産を見直してみよう

ここで紹介した新規事業の成功事例は、富士フイルム株式会社とユニ・チャーム株式会社は、既存技術の転用による新規商品開発の例でした。ヤマト運輸株式会社と株式会社ヤマダ電機は所有する流通チャネルを活用した多角化経営の一例です。日常業務や将来的な市場の動向は企業が「予測される変化」に対して柔軟に対応している実例を示しています。その際の戦略は本業が属している業界から、一見すると何の関係もないような他の業界への進出となっており、大きなリスクをはらむ行為のようにも見えます。しかしながら、既存のリソースの可能性を冷静に分析・把握して、少しでも可能性がありそうな分野に積極的に進出することが大切です。この4社の例のように自社が保有する経営資源を最大限活用できれば、新たな価値の創造は困難ではないといえるでしょう。