
今ある事業を継続させた方がいいのか、撤退した方がいいのか基準が分からない…。

事業を撤退したいけどどのような方法があるのか分からない…。
新規事業を立ち上げた場合、なるべく順調に、かつ長期的に事業を継続していくよう舵を取るのが経営者の務めです。
しかし、経営の状態によっては事業撤退を検討しなければならないこともあります。
そのような場合、事業撤退のタイミングや具体的な方法がわからない・誰に相談すべきか悩んでいる、このようなお悩みをお持ちではありませんか?
撤退のタイミングを誤ると、会社存続の危機に直面するおそれがあります。
会社や社員を守るためにも、しっかりと理解したうえで検討することが大事です。
したがって、新規事業の立ち上げを検討するのなら、あわせて事業撤退の判断基準も押さえておく必要があります。
今回は、事業撤退の基礎知識や判断の基準、具体的な撤退の方法など、ぜひ覚えておきたい情報をまとめました。
この記事を読み終えると、こんなことが実現できます
- 事業撤退の判断基準を理解することで、会社に与える損失を最小限に近づける。
- 事業撤退の活用メリット・デメリットが分かる。
- 事業撤退の手法を活用し、状況に応じてスムーズに撤退を行うことが出来る。
それでは早速、読み進めていきましょう。
▼目次
事業撤退の意味とは

事業撤退とは、市場で優位性を失った事業を停止することです。
新規事業の立ち上げの際には、念入りなリサーチやマーケティングを行い、採算が見込めると判断できた場合のみGOサインが出ます。
しかし、どんなに入念に計画を練ったとしても、その事業が100%成功するとは限りません。
ときには想定外の事態が発生し、大きな損害を出してしまうこともあります。
ビジネスに浮き沈みは付きものなので、誰しも多少のリスクは想定しています。
しかし、新規事業の損失が会社そのものの経営に影響を及ぼすようなら、そのまま事業を存続するのは得策とはいえません。
一度傾いた経営を再び軌道に乗せるのは簡単なことではありません。
したがって、経営者はこれ以上影響が大きくなる前に、不採算部門の事業撤退の判断を迫られることになります。
事業撤退を判断する基準

今後、事業収益の浮上の見通しが立たず、現時点で巨額な赤字や負債を出す事業なら、即座に撤退を決断することができます。
しかし、赤字を出しているものの、今後持ち直す可能性がゼロとは言い切れない事業の場合、
- 立て直しを図るのか
- 事業撤退を決断するか
どちらにするのか、判断に迷うこともあります。
ただ、事業撤退の判断を先送りにしていると、赤字や負債が拡大し、大きな痛手を被ってしまうおそれがあります。
いざ赤字や負債を出してから「事業撤退するか否か」を考え始めると手遅れになりかねません。
したがって、新規事業を立ち上げるのなら、あらかじめ事業撤退の判断基準を設けておくことが大切です。
では、事業撤退の判断基準はどのように決めればよいのでしょうか。
ここでは、事業撤退を判断する基準の定め方を3つのポイントに分けて解説します。
- KPIを用いて判断する
- 会計上の損益または投資回収率で判断する
- 市場の成長性・シェア率で判断する
1. KPIを用いて判断する
KPIとは、Key Performance Indicatorの略称で、日本語では「重要業績評価指標」という意味です。
企業が特定の目標を達成するために行うさまざまなプロセスや行動に対する評価を数値化することで、客観的に目標の達成度合いをチェックすることができます。
たとえば、新規事業の立ち上げにあたり、受注数や顧客数をKPIに設定し、「3年以内に70%以上達成できなければ事業撤退」といった基準を設けておけば、大きな損害を出す前に事業撤退か継続かの判断を下すことができます。
目に見える指標で判断できるのでとてもシンプルですし、とくに競合他社が多い業界においては、「対等か、それ以上に渡り合える存在になり得るかどうか」を見極めるのに役立つでしょう。
2. 会計上の損益または投資回収率で判断する
KPIを用いた判断基準の場合、赤字や損失を出していても、顧客数や発注数が目標を達成していれば、事業継続という判断になることもあります。
一方、会計上の損益または投資回収率で事業撤退の可否を判断する場合、利益を出すことが最低条件となります。
たとえば、
- 「5年以内に黒字にならなければ事業撤退」
- 「投資額が一定ラインを上回るようなら事業撤退」
といった基準を設けておけば、損失を出す前に、あるいは損失が大きくなる前に撤退することができます。
ただ、どこからどこまでを評価・コストに盛り込むかの判断が難しいという欠点もあります。
新規事業の立ち上げにあたって費やした初期投資を計算に入れるかどうか、他の事業と共通するコストを計上するかどうかなどを当初から決めておかないと、当該事業を正確に評価できなくなるおそれがあるため、要注意です。
3. 市場の成長性・シェア率で判断する
現時点でかろうじて利益がある、もしくは損失が少ない事業の場合、良い意味でも悪い意味でも会社に大きな影響をもたらす存在ではないため、事業継続か、撤退かで迷うところです。
そんなときは、市場の成長性やシェア率にも目を向けてみましょう。
理想は、市場成長性・シェア率ともに高い事業です。
しかし、今後大きな成長性が見込めなくても、現時点で高いシェア率を誇っている事業であれば、会社にとって貴重な収入源となります。
逆に、市場シェアが低い事業でも、今後の市場成長性が見込める場合は、早期に事業撤退を決めるのは早計です。
追加投資を行うと一時的に赤字・損失を出してしまいます。
しかし、将来優秀な収益源となるのなら、大胆な手を打つのもひとつの方法です。
市場シェア率が低く、今後の市場成長性も見込めない場合
この場合は、事業撤退の積極的な検討が必要です。
市場シェア率と市場成長率は以下の計算式で求められます。過去のデータも参考にしながら、伸び率をチェックしてみましょう。
市場シェア率(%)=自社の市場での売上もしくは販売数/市場の総売上もしくは総販売数
市場成長率(%)=今年度の市場の総売上/前年度の市場の総売上
事業撤退で発生する費用

新規事業の撤退を検討するのは、「これ以上損失を出したくない」という思いがあるからです。
しかし、一度立ち上げた事業を停止するのにもそれなりのコストがかかります。
場合によっては、新規事業の立ち上げにかかった初期投資よりもコストがかかることもあります。
そのため、もし事業撤退した場合、どのくらいの出費が予想されるのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
事業撤退で発生する費用は業種によって異なりますが、ここでは店舗閉鎖をともなう事業撤退を例に、主なコストを4つご紹介します。
- 店舗の解体費用
- 賃貸借契約解約違約金
- リース解約違約金
- 原状回復費用
1. 店舗の解体費用
事業撤退にともない不要になった店舗は、一般的には不動産仲介業者を介して売りに出されます。
しかし、買い手が見つからなかった場合は、店舗や内装を解体する必要があります。
解体費用は建物の規模などによって異なりますが、1坪あたり2~4.5万円くらいが相場とされています。
仮に50坪の店舗を解体する場合、100万円~225万円くらいの費用がかかる計算になります。
2. 賃貸借契約解約違約金
貸店舗を利用していた場合、事業撤退によって賃貸借契約を中途解約することになりますが、契約内容によっては違約金が発生することもあります。
たとえば、5年間にわたって貸店舗を利用することを前提に賃貸借契約を結んだにもかかわらず、3年間で事業撤退することになった場合、残り2年間の残存期間の賃料を賃貸借契約解約金として請求される可能性があります。
ただ、過去に賃貸借解約違約金について争った裁判では、残存期間の賃料を解約違約金として請求できるとする特約は、貸借人の解約の自由を極端に制約することになるとして、違約金は1年分の賃料および共益費相当額を限度とし、残りの部分の請求は無効とする判決が下されています。
そのため、解約違約金の請求額は長くても1年分と想定されますが、仮に30坪の貸店舗を坪単価2万円/月で契約した場合、1ヶ月あたりの賃料は60万円、1年分は720万円にも上ります。
もちろん、契約が切れるタイミングで事業撤退すれば解約違約金は支払わずに済みますが、事業撤退のタイミングを逃すと損失が膨らむ可能性がありますので、契約終了を待って撤退するか、今すぐ撤退するか、よく考えて判断することが大切です。
3. リース解約違約金
店舗が設備投資を行う際、リース契約を利用するパターンも多く見られますが、原則としてリース契約は中途解約が認められていません。
事業撤退を理由に、どうしてもリース契約を中途解約したい場合は、残リース料を一括で支払うか、あるいは残リース額相当の違約金を支払わなければなりません。
貸店舗に比べると、1件あたりのリース金額は少ないものの、多数の設備を導入している場合、多額のリース解約違約金が発生する可能性があるので要注意です。
4. 原状回復費用
貸店舗の場合、賃貸契約に基づいて、物件を入居前と同じ状態に戻す「原状回復」を行う義務があります。
原状回復の定義についてはこれまで再三議論されていましたが、国土交通省がまとめたガイドラインにより、原状回復は「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されることになりました。
つまり、賃借人は自然使用による経年劣化に対して原状回復する義務は負わないということを意味します。
ただし、新規事業の立ち上げ時にさまざまな内装工事を行った場合は、それらの解体費用を負担することになるため、注意が必要です。
事業撤退で考えられるリスク

事業撤退は経営上のリスクを軽減するために行う対策です。
一方で、事業撤退によって新たなリスクを生み出すこともあります。
前節で紹介したコストもそうですが、ここでは事業撤退によって起こり得る主なリスクを2つご紹介します。
- 顧客や取引先からの信用低下・ブランド価値の低下
- 従業員からの信頼低下
1. 顧客や取引先からの信用低下・ブランド価値の低下
赤字を出す不採算事業であっても、立ち上げから事業撤退までの間に一定の顧客はつくものです。
事業撤退すると、その事業の商品やサービスを使っていた顧客は少なからず迷惑を被りますので、企業への信用やブランド価値が低下するおそれがあります。
場合によっては、ほかの事業の商品・サービスの不買につながることもあるため、事業撤退する際は、既存の顧客ができるだけ不平・不満を抱かないよう、誠意ある対応を行うことが大切です。
たとえば、商品の最終受注時期や出荷予定時期を余裕を持って伝える、アフターサービス期間を明確化する、といった対応を取っていれば、顧客から大きな反感を買うリスクを最小限に抑えられます。
2. 従業員からの信頼低下
事業撤退にともない、信用が低下するのは顧客だけに留まりません。
従業員にとっても、自分の属する企業が新規事業の立ち上げに失敗したとなると、落胆や失望を禁じ得ません。
とくに事業撤退にともなって従業員のリストラなどを行った場合、社内からも反感を買うおそれがあります。
新規事業の立ち上げにともない、新たに人を雇用していた場合、事業撤退後の従業員の受け皿に困るケースは少なくありません。
信頼の低下を防ぎたいのなら、他の事業への配置転換などを検討した方がよいでしょう。
事業撤退の手法(方法)

事業撤退の手法(方法)は、大きく分けると「事業譲渡」「会社清算」の2つがあります。
それぞれ特徴や手続き方法が異なりますので、状況に応じてどちらの方法を選ぶか慎重に検討しましょう。
事業譲渡
事業の一部または全部を他社に譲り渡す方法のことです。
事業の権利や、利用していた資産、場合によっては従業員の雇用契約も引き継いでもらえるため、資産の処分や従業員の処遇決定を行わずに済むぶん、スムーズに事業撤退できるところがメリットです。
一方で、譲り受け企業(買い手)が見つからなかった場合、事業撤退までに時間がかかってしまうというリスクがあります。
また、事業譲渡を行った経営者は、一定期間にわたって周辺エリアで譲渡した事業と同じ事業を立ち上げられないというルールがあります。
仕切り直して再起したいと考えている場合は要注意です。
会社清算(解散)
会社清算とは、会社を解散し、保有していた資産と負債を清算する方法のことです。
事業撤退=廃業の場合に用いられる方法で、事業に用いていた不動産や設備などはすべて売却して現金化し、負債を返済します。
もし資産が残った場合は、株主に分配し、すべての資産・負債を清算することになります。
ただ、事業撤退までには株主総会を開いたり、清算人の登記や財産整理を行ったりと、さまざまな手続きを行わなければなりません。
事業規模にもよりますが、相応の手間と時間がかかるため、事業譲渡できなかった場合の最終手段として用いられるケースが多いようです。
【まとめ】新規事業を立ち上げる際は、万一のことも考えて事業撤退の基準を設けておこう

新規事業は必ず上手くいくという保証はなく、想定外の状況によって赤字や負債を出し続けてしまうこともあります。
一定のシェア率や成長性を見込めるのなら、事業継続するのもありです。
しかし、今後上がっていく見込みがないと思われる場合、事業撤退を検討しなければなりません。
事業撤退のタイミングを先送りにすると、損失が拡大して会社の経営に大きな影響をもたらすこともあります。新規事業を立ち上げたら、万一に備えて事業撤退の基準を設けておくことも大切です。
もしもあなたが、
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<外部参考サイト>
[注1]公益社団法人 全日本不動産協会:契約期間内の解約と残存期間の賃料の没収
[注2]国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について