新規事業で重要なSTP分析とは?マーケティング戦略での目的や活用方法を事例付きで解説

新規事業で重要なSTP分析とは?マーケティング戦略での目的や活用方法を事例付きで解説
    • 新規事業
  • 2022年6月16日
ポイント

新規事業を始める前に、マーケティング調査をしたいが、方法がわからない。

ポイント

STP分析が大切とはいうけど…、重要性がよくわからない。具体例を元に勉強したい

STP分析とは、マーケティング手法の1つです。市場を細分化し、下記の領域を発見するために利用します。

  1. 自社の強みが活かせるセグメントを発見する
  2. 優位性を保ちながら競合他社との競争を避ける

多くの企業で用いられている手法で、日本国内では「ユニクロ」がSTP分析を活用した成功事例といえるでしょう。

私は、株式会社Pro-D-useという新規事業・事業再生専門の経営コンサルティング会社で、数多くのプロジェクトでSTP分析を活用してきました。

執筆者:株式会社Pro-D-use岡島光太郎

本記事では、STP分析の意味や目的、活用方法、注意点を解説します。

この記事を読み終えると、こんなことが実現できます

  • 市場を多角的に分析し、未開拓市場が発見できる
  • 自社の強みが活かせる、ターゲット層が見つかる
  • 競合他社との衝突を避け、利益を確保できる

STP分析で、利益を確保しながら、競合との争いを避けられる市場を発掘しましょう。

新規事業は「なんとなく」で進めると、必ず失敗します。上手くいく新規事業には一定のパターンがあり、それを知らずに新規事業を始めてはいけません。

弊社「(株)Pro-D-use(プロディーユース)」は、“伴走型の新規事業支援” を得意とするコンサルティング会社です。これまで300件以上の新規事業の相談を受け売上10.38倍」「営業利益大赤字→営利23%の黒字化など、多くの実績をあげてきました。

そんな弊社に【新規事業の無料相談】してみませんか?詳しくは下記サービス詳細をご覧ください。
\\ プロに相談して楽になる! //
新規事業サービスはコチラ >>>

\「新規事業の悩み」がスッと軽くなる /

新規事業で重要なSTP分析とは?

新規事業で重要なSTP分析とは?

STP分析とは、市場を細分化し、自社の優位性できるセグメントを発見するためのマーケティング手法です。

「近代マーケティングの父」とも称される経営学者、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)が提唱した方法で、下記の頭文字を取りSTP分析と呼ばれています。

Segmentation(セグメンテーション)市場細分化
Targeting(ターゲティング)ターゲット層を抽出する
Positioning(ポジショニング)自社の競争優位性を確立する

STP分析は消費者の属性やニーズを起点に考えるため、その後の値付けや広告などの施策立案に至るまで、「顧客視点」で考えられことが最大のポイントです

新規事業では、誰にどのような商品を売るか、また、競合他社に対して優位性を獲得できるか、見極めが重要です。そのため、STP分析は、市場調査や、経営戦略の立案時にも活用されます。

新規事業におけるSTP分析の目的

新規事業におけるSTP分析の目的

新規事業でSTP分析を行う目的は、以下の2つです。

  • 適切な市場に最適な商品・サービスを提供すること
  • 競合他社との争いをできるだけ避け、自社の優位性を確立すること

新規事業に限らず、経営資源は有限です。また、マーケティングにおいて、全ての顧客に受け入れられる商品の開発は不可能です。

これらの前提を克服するためにも、自社のサービスに合ったセグメントを発見し、ターゲット層を絞り込む必要があります。

また、新規事業では利益の獲得も大切な課題です。大抵の市場には、既に大勢の競合他社が存在します。自社のポジションと、優位性の確立により、ライバルとの正面衝突を避けながら、利益を上げに行くことが可能となります。

新規事業立ち上げ時のSTP分析のやり方(テンプレート付き)

新規事業立ち上げ時のSTP分析のやり方

STP分析は、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順に行うのが一般的です。それぞれの方法を具体的に解説します。

1.セグメンテーション:市場の細分化

セグメンテーション(市場細分化)では、対象の市場や顧客を細かく分けて、属性やニーズといった切り口(グループ)を作ります。

代表的な方法は、市場を家庭での利用を前提とした「消費財市場」と、商品生産のため企業が利用する「生産財市場」の2つに分類するものです。

上記市場をさらに4つの変数で分類すると、下記のとおりとなります。

【消費財市場】

人口動態変数年齢、性別、家族構成、職業、収入、最終学歴 など
地理的変数世界の地域、国、人口密度、気候、宗教、発展度、住まい、文化 など
心理的変数ライフスタイル、興味関心、価値観、購買動機、社会階層 など
行動変数購買経験の有無、使用頻度、購入回数、購入プロセス、ベネフィット、ロイヤリティ状態 など

【生産財市場】

オペレーティング変数使用頻度、利用滋養協、顧客の能力 など
購買アプローチ変数購買方針、購買意欲 など
状況要因変数緊急性、受注量 など
消費者の特性決裁権の有無 など

以上はあくまでも一般例であり、自社独自の変数を利用する場合もあります。

2.ターゲティング:ターゲット層を抽出する

細分化したセグメントを元に、どこで勝負するかを決定するのがターゲティングです。市場規模は適切か、成長の可能性が高いかなど、新規事業を十分に発展させらるセグメントか見極めます。

見極めの際は、「6R」のフレームワークを利用するとよいでしょう。

【6R】

Realistic Scale利益が得られる適切な市場規模か
→自社の経営資源を踏まえて、定量的に判断
Rate of Growth今後も成長が見込めるか?
→収益を上げ続けられる成長性があるか判断
Rank/Ripple EffectSNSでの拡散など、顧客の波及効果は高いか?
→顧客にとっての優先度を判断
Reach顧客に商品やメッセージは届くか?
→コミュニケーションを図り、接触できるか判断
Rival競合他社の多さ、自社に優位性はあるか?
→競合状況や、自社が勝ち残れるか判断
Response顧客からの反応は数値により測定できるか?
→アプローチの効果を測定できるか判断

さらに標準となる市場規模を絞り込む「市場ガバレッジ戦略」や、セグメントの標準顧客を具現化する「ペルソナ分析」などと合わせることで、より精度の高いターゲットが見つかるでしょう。

3.ポジショニング:自社の競争優位性を確立する

ポジショニングでは、ターゲットに定めたセグメントで、自社がどのような立ち位置を取るか決定します。つまり、「競合にはない独自の提供価値を決める」ということです。

競合他社と自社の立ち位置を視覚的に理解するためにも、「ポジショニングマップ」を活用しましょう。ポジショニングマップとは、2軸のマトリクス図のことで、自社の強みやターゲット層が重視する価値などを縦軸と横軸で表し、自社と競合他社の製品・サービスをマッピングしていく方法です。

ただし、ポジショニングマップを完成させるだけでは効果は発揮できません。

ポジショニングマップを作成したら、それをベースに、

  • 顧客へ自社の魅力の訴求を明確にする
  • マップをもとに、値付けや広告等の施策を打ち出す

このように、ポジショニングマップ作成で競合他社との衝突を避けながら、自社の独自性や強み活かせる領域が発見できるのです。

「やり方は分かったものの、うまくできる自信がない」
「自社の状況に当てはめると、どう考えれば良いんだろう…?」

そんなときは、私たち「Pro-D-use」に相談してみませんか?Pro-D-useは伴走型の新規事業開発・収益化支援を得意とするコンサルティング会社です。詳しくは新規事業支援サービスページをご覧ください。

Pro-D-useの新規事業支援サービスの詳細を知る

STP分析の企業活用事例

STP分析の活用事例

以上のように、STP分析を活用すれば、新規事業の成功確率を高め、競合との摩擦を避けることに役立ちます。

ここからは、「ユニクロ」や代表的な飲食店でのSTP分析事例を合わせて4つ紹介します。ぜひ、参考にしてください。

  1. ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)のSTP分析
  2. コカ・コーラのSTP分析
  3. タピオカミルクティーで有名な「ゴンチャ」のSTP分析
  4. スターバックスコーヒーのSTP分析

1.ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)のSTP分析

競合他社の多いアパレル業界で、「ユニクロ」全世界展開を果たした理由には、徹底したマーケティング戦略が上げられます。

では、具体的にSTP分析を確認します。

セグメンテーション顧客の“特徴”ではなく“ニーズ”により細分化
ターゲティング年齢・性別・国籍を限定せず、「高品質なベーシックカジュアルを求める全ての顧客」ターゲット
ポジショニングベーシックカジュアル、LIFE WARE(究極の普段着)

ユニクロのSTP分析で特徴的なのが、セグメンテーションの方法です。

ファッション業界では、性別(レディース・メンズ)や、年齢(ヤング・アダルト・ミドル・シニア)など顧客の“特徴”で分割するのが一般的ですが、そのような中、ユニクロは下記のような顧客の“ニーズ”に合わせて細分化しています。

  • どのような服とも合わせやすい
  • 高機能・高品質・低価格

細分化の結果、ターゲットとして浮かび上がったのは、「性別や年齢に囚われない、ベーシックカジュアルを求める全ての顧客」です。

また、ユニクロのポジショニングマップは、縦軸と横軸を下記のように設定して分析します。

縦軸トレンドかベーシックか
横軸機能性かデザイン性か

競合他社は「トレンド×デザイン性」に偏る中、ユニクロは「ベーシック×機能的」なポジショニングを確立。「LIFE WARE」をコンセプトに掲げ、世界的な企業に成長しました。

ユニクロがこれだけ広範囲をターゲットにできたのは、商品の企画・製造・販売を自社で一貫して行える製造小売業(SPA)であることも理由としてあげられます。

以上のように、顧客のベネフィットに着目し、自社の生産体制を強みとして活かせるターゲットを発見したことが、ユニクロ成功の理由の1つといえるでしょう。

2.コカ・コーラのSTP分析

「コーラ」以外にも、「ジョージア」や「い・ろ・は・す」などのドリンクの販売をしていることで有名なコカ・コーラは、STP分析をかなり事細かに進め、シーンに合わせて細分化した市場で的確に販売を行っています。

しかし同時に、セグメントをあえて分けず市場全体に同じ商品を提供する無差別マーケティングも実施しているのが特徴です。

セグメンテーション・炭酸飲料・スポーツ飲料・ウーロン茶・朝食に合うドリンクなどシーンに合わせて細分化
・細分化せず同じ顧客に複数商品を提供
ターゲティング幅広いライトユーザー
ポジショニングブランド力、商品開発力

過去に、コカ・コーラはブランド力のみで販売を展開していたところ、後発のペプシに顧客層を奪われ業績が低迷したことがあります。

それを受けて、自社の購買実績の過半数を占める「年間で0~2本程度購入する」ライトユーザーをターゲットに見定め、取り組みを強化しました。例を挙げれば、テレビCMなどメディアによるPR、そして「食事に合う商品」「健康を意識した商品」といった細かな市場への参入です。

その結果、コカ・コーラは現在、歴史あるブランド力と細かなニーズに合わせた開発力を併せ持つポジションの企業となり、業績を大幅に成長させています。

STP分析を行うことで、競合他社との衝突を避けながら優位性を確保する、という巧みなポジショニング戦略が行えることが分かる事例です。

3.タピオカミルクティーで有名な「ゴンチャ」のSTP分析

2015年頃から若者を中心に再ブレイクを果たしたタピオカドリンクの、代名詞ともいえる「ゴンチャ」をSTP分析してみると、流行した理由が非常によく分かります。

では、具体的にSTP分析を解説していきます。

セグメンテーション10代女性~20代女性
ターゲティングSNSを駆使する流行に敏感な層
ポジショニングコーヒー嫌いのスターバックス好き

ゴンチャの最たる特徴はポジショニングで、「コーヒーは嫌いだけどスターバックスは好き」というポジションを狙った点です。

社長自ら「お茶のスタバ」を目指すと公言しており、SNSから流行をキャッチアップし「インスタ映え」を狙って投稿する習慣のある層をターゲットにすることや、10代が少し高いと感じる価格帯であることなど、スターバックスコーヒーと同じ設定が随所に見られます。

しかし、明確にポジションに差をつけるため、ゴンチャが展開する20ヵ国の中で日本だけメニューにコーヒーがありません。

その結果、コーヒー以外でスターバックスを楽しめるポジションとして、10代を中心に大流行を果たしました。STP分析を綿密に行うことで、競合がいないブルーオーシャンを見事に見つけた好事例です。

4.スターバックスコーヒーのSTP分析

スターバックスコーヒーのセグメンテーションは非常に細密です。

年齢に加え、「学生」「会社員」「公務員」「自営業」「ノマドワーカー」「退職者」などの細かな職業、さらには経済的な地位の高さや大都市か地方都市か、といったことも付け加えて細分化しています。

様々な分野に活かせるセグメンテーションなので、ぜひ参考にしてください。

セグメンテーション高校生からシニア世代までの、学生・リタイア組含むあらゆる職業で細かくセグメント分割
ターゲティング平均以上の収入を得ているオフィスワーカーを中心に時間帯によって変更する
ポジショニング都会的でおしゃれな雰囲気の店で高くて美味しいコーヒーの提供家と職場以外で快適に過ごせる「サードプレイス」

スターバックスコーヒーのターゲットは、「大都市、主要都市において平均以上の収入を得ているオフィスワーカーです。

しかし、市場の細分化を徹底した結果、営業時間帯によって利用者層が変化することに気づき、メインターゲット層以外の利用者も増加させることに成功しました。

例えば、早朝は出勤前のオフィスワーカーやリタイアした方、お昼の時間は主婦やフリーランスの方、夕方から夜間にかけては学生や帰宅前の会社員の方をターゲットにすることができています。
セグメンテーションをしっかりと行うことで、強みを活かせるセグメントを発見できる、というSTP分析の有効性が分かる好事例です。

新規事業立ち上げ時のSTP分析における4つの注意点

新規事業立ち上げ時のSTP分析における4つの注意点

最後に、新規事業立ち上げ時にSTP分析を活用する際に、注意しておくべきポイントを4つ紹介します。

  1. STPを連動させて考える
  2. 適切なセグメントを考慮する
  3. ターゲットのニーズを常に意識する
  4. 競合のビジネスモデルも把握しておく

それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にして活用してください。

1. STPを連動させて考える

1. STPを連動させて考える

STP分析では、1つひとつの項目で分析する内容が多岐に渡ります。そのため、分析途中で各要素に矛盾が生じることのないよう注意しましょう。

例えば、「中性脂肪に悩む男性」をターゲットに緑茶を開発したい。ポジショニングの結果、「特保飲料」に競合が多いから「通常の緑茶」として販売する。

…これでは、肝心のターゲットに商品が届かない可能性が高くなります。STP全てが連動するように注意しましょう。

2. 適切なセグメントを考慮する

2. 適切なセグメントを考慮する

セグメンテーションは、ただ細分化すればよいのではなく、自社の強みを活かせるセグメントの発見が大切です。そのため、下記4Rに照らし合わせて、適切なセグメントか否かを判断しましょう。

【4R】

Rank(優先順位)経営戦略上、重要か
Realistic(規模の有効性)十分な利益を確保できるか
Reach(到達可能性)商品やサービスを届けられるか
Response(測定可能性)指標により測定可能か

3. ターゲットのニーズを常に意識する

3. ターゲットのニーズを常に意識する

マーケティングとは、「顧客のニーズに応えて利益をあげること」と定義されます。自社の得意な分野であっても、それが顧客にとって価値がなければ、商品は売れません。(例:黒電話専用カバーなど。)

そのため、ターゲットを設定する際は、常に顧客目線を意識しましょう。

4. 競合のビジネスモデルも把握しておく

4. 競合のビジネスモデルも把握しておく

ポジショニングの際は、他社のビジネスモデルもしっかり確認しておきましょう。

現在は空白領域であっても、真似しやすく、規模の優位性が強いポジションなら、一気に大手に立場を奪われる可能性があります。競合他社のビジネスモデルでは、進出しづらいことがわかれば、優位性を長く保てるでしょう。

自社の強みを活かせる領域を発見しよう

自社の強みを活かせる領域を発見しよう

STP分析は、自社の強みが活かせるセグメントの発見と、競合他社との衝突をさける優位性の確保が目的です。STP分析の活用により、利益につながる未開拓市場の発掘に役立つでしょう。

利益の確保が重要な新規事業では、自社の強みを最大限活かせる領域を発見するためにも、STP分析を活用するとよいでしょう。

新規事業は「なんとなく」で進めると、必ず失敗します。上手くいく新規事業には一定のパターンがあり、それを知らずに新規事業を始めてはいけません。

弊社「(株)Pro-D-use(プロディーユース)」は、“伴走型の新規事業支援” を得意とするコンサルティング会社です。これまで300件以上の新規事業の相談を受け売上10.38倍」「営業利益大赤字→営利23%の黒字化など、多くの実績をあげてきました。

そんな弊社に【新規事業の無料相談】してみませんか?詳しくは下記サービス詳細をご覧ください。
\\ プロに相談して楽になる! //
新規事業サービスはコチラ >>>

\「新規事業の悩み」がスッと軽くなる /

<参考>
ポーター賞:株式会社ファーストリテイリング ユニクロ事業

コラム著者プロフィール

岡島光太郎

岡島 光太郎

取締役副社長 兼 経営コンサルタント(Co-founder)

2009年:(株)リクルートに新卒で入社。営業・企画の両面で責任者を務める。
※リクルートではMVPやマネジメント賞など、個人・マネージャー賞を多数受賞。
2013年:(株)データX(旧:フロムスクラッチ)の創業期に転職。営業や新卒・中途採用の責任者を務める。
2014年:アソビュー(株)に転職。その後、営業責任者、新規事業責任者を歴任。
2015年:(株)Pro-D-useを創業。取締役副社長(現任)に就任。

【得意領域】
新規事業の立上げ~収益化、成果を上げる営業の仕組み作り、BtoBのWebマーケティングを主軸とした売れる仕組み作り、DXまで見通したIT・SaaS・業務システムの導入や運用、融資を中心とした資金調達~財務のコンサルティングを得意としている。

【担当業種】
「システム受託開発」「Webサービス」「Tech系全般」「製造」「建築」「販売・サービス」「スクール業」など多岐。

【資格・認定】
中小企業庁認定:中小企業デジタル化応援隊事業認定IT専門家 / I00087391
経済産業省認定:情報処理支援機関 / 第39号‐24060007(21)