印刷業界の市場規模を的確に把握するための方法

印刷業界の市場規模は年々減少傾向にあります。従来の印刷業務に加えてITを使ったデジタル化や高機能化などの取り組みが行われています。新たなビジネスモデルが確立されつつある印刷業界の動向について詳しく見ていきましょう。

印刷業界が置かれている現状と市場規模

経済産業省の「工業統計」によると、印刷業界の市場規模は2004年には7兆2,127億円であったものが、2014年には5兆5,364億円となり10年間で1兆7,000億円の減少となっています。(※1)印刷業界は印刷業・製版業・製本業・印刷加工業に加えて印刷関連サービス業で構成されており、市場規模としては自動車整備業界と同じ程度です。従来の印刷業の業態のままでは売り上げを伸ばしていくことが難しいため、新たな業態を求める動きが活発化しています。また都道府県別に見ると東京が突出して高いものの、事業者数が多いため成長率は低い傾向にあります。(※2)印刷業界が抱える課題としてインターネットの登場によって、それまではセルフプロモーションとして力を発揮していた印刷媒体のシェアを奪われつつあることです。インターネットとの差別化を図り、新たなセルフプロモーションの手段を模索しています。また人口減少などの影響によって、企業や自治体からの注文が減ってきており、受注型営業から「提案型営業」への切り替えが課題となっています。そして、広告やパンフレット・出版などの紙媒体の需要が徐々に減ってきているため、電子書籍事業への参入なども取り組みが行われています。印刷業界の市場規模は大きな落ち込みはないものの成長率が伸び悩んでいるため、新たな収益の柱の獲得が課題となっているのです。

年に1度の「工業統計」から見えてくる課題

経済産業省が年に1度発表する「工業統計調査」というものがあります。2014年版によると印刷・同関連業の出荷額は5兆5,364億円です。前年と比べて0.2%の減少と横ばいの状態が続いています。内訳としては印刷業が4兆9,761億円で全体の約90%を占めています。(※3)市場規模は2007~2009年までは成長を続けていたものの、2010年以降は減少に転じています。現象の影響として考えられるのはインターネットや電子書籍の登場であり、紙媒体を主体としている出版業界の市場規模も減少している状態です。それに伴って、出版物の売り上げが落ち込んだことによって印刷業の市場規模も減ってきています。紙媒体の売り上げの減少をどう補い、新たな収益を確保していくかが業界全体の課題となっています。

毎月発表される「印刷統計」から見えてくる課題

また2016年の経済産業省が公表した生産動態統計(印刷統計)から見えてくるものもあります。品目別に見ていくと、平版(オフセット)印刷物は全製造業の品目で7,044事業所と最も多い事業所数となっており、47都道府県中26都道府県で最も事業所数の多い品目です。特に東京都では印刷業が1位を占めているのが特徴的だといえます。(※4)印刷業は1994年には5,577事業所あったものの、2014年には974事業所にまで減少しており、都市部に集中していることがうかがえます。その一方で、特殊印刷業を営む事業所が全体のシェアでは割合が大きくなってきており、2014年では1,274事業所となっています。特殊印刷とはプラスチックフィルム印刷や金属印刷、布地印刷などのことです。印刷のデジタル化や高度化によって、これまでの印刷の形にとらわれない商品やサービスが生まれています。

印刷業界が対象としている事業の範囲

印刷業とは平版・オフセット印刷、凸版・活版印刷、グラビア印刷などがあります。他にも、シルクスクリーンなど特殊印刷や金属・プラスチック・布地に印刷したりするものも含みます。技術革新に伴って印刷の形態も変わってきており、デジタル印刷機の登場などで印刷の高度化が進んでいます。国内では高度経済成長以降、印刷業は継続的に成長していました。特にオフセット・平版印刷、活版・凸版印刷による出荷額の押上が顕著で、1枚1枚の紙に印刷をしていく平版印刷機も巻き取り紙に連続して印刷していく輪転機へと発達しています。また1980年代以降は印刷のデジタル化が進み、コンピュータを使った画像処理やスキャナの発達によって印刷技術も高度化しています。1990年代以降は経済情勢などの影響から印刷業界の市場規模は落ち込んでおり、多くの中小零細企業が倒産しました。その一方で組織の体力を強化するために、業界再編も加速したといえます。2000年代以降はインターネットや電子書籍、3Dプリンターなどの登場によって新たな課題に直面しています。従来の印刷の形にとらわれない業態も増えてきており、経営の多角化が進んでいます。印刷業は出版や広告などを中心としてはいますが、印刷会社が電子書籍の販売サイトを立ち上げたり、他業種に進出したりするといった流れも多くなっているのが特徴です。

デジタル化の種類と現状

印刷のデジタル化は1980代ごろから始まっています。レイアウトや色調・画像の処理にコンピュータを使うようになりレーザー光線なども活用され始めました。文字や画像をデジタル記号化し、高速処理するカラースキャナも登場したことで飛躍的に印刷スピードが向上しました。DTP(机上型電子編集システム)によって、製版が不要になったのも特徴です。デジタル印刷機の登場によって、それまでのオフセット印刷よりも少ない人数で運用することが可能となり経営の合理化が進んだといえます。印刷のデジタル化によって小ロットでの生産ができ、人的ミスも減らせるようになったのはメリットです。ただ、画質やランニングコストなどの面で従来のオフセット印刷の領域を丸ごとデジタル印刷が取って代わることは難しいといえます。デジタル印刷では紙だけではなく、金属、プラスチック、布地、ガラスや大理石などにまで印刷ができます。広告の分野ではそれまでの紙媒体だけのプロモーションだけではなく、さまざまな素材に印刷をして広告効果を高めることにつながっています。

市場規模から見えてくる印刷業界の今後

2010年以降、印刷業界の市場規模はゆるやかに減少傾向にあります。パソコンやインターネットの普及によって、従来の紙媒体への需要が落ち込んでいるのが主な原因だといえます。出版分野での売り上げは電子書籍の登場によって減少しており、紙媒体だけにこだわらない事業展開が急務となっています。さまざまな素材に印刷をする特殊印刷の分野では広告効果が高いことを強みとして、新たなプロモーションとして期待されているといえるでしょう。また印刷のデジタル化を進めることによって、人的ミスやコストの削減をし、変化していく顧客のニーズに素早く対応していく姿勢が求められています。少子高齢化に伴う人口減少の影響もあり、今後も印刷業界は苦戦が予想されるものの、受注型営業から提案型営業に切り替えるなど多くの企業で新たな取り組みが行われています。一般家庭にパソコンが普及し、インターネット環境が整ってきたことで印刷の現場との距離が近くなってきた流れもあります。顧客から文字や画像情報を送ってもらい、すぐにデジタル印刷をして納品するといったインターネットを介した事業も盛んになっています。少数のロットから本を印刷するオンデマンド印刷も行われており、従来の出版の形にとらわれない動きも出ています。これまで業界が蓄積してきたノウハウやスキルをデジタル分野でどう活かしていくかが、それぞれの企業にとっての課題となっています。いずれにしても、顧客のニーズをよくくみとって新たなマーケットを築いていく姿勢が求められているでしょう。

“※1https://www.jfpi.or.jp/topics_detail6/id=77
※2http://www.brainrm.co.jp/newsformR%E5%8D%B0%E5%88%B7%E7%9C%8C%E5%88%A5.html
※3http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/
※4http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html”