新商品を生み出すための押さえるべき開発のプロセス

新商品の開発には、企画から生産をへて店頭に並ぶまで、いくつかのハードルがあります。それぞれの段階で、注意すべきポイントがあり、評価手法が存在します。主な項目について、マーケティング理論を応用しながら検討してみましょう。

顧客に対してどんな価値の提供ができるかを考える

顧客というのは、custom (習慣、慣習)の派生語 customer の和訳ですが、一見客ではなく、商品を繰り返し購入してくれるリピーターのことを指しています。企業が顧客に対して提供できる価値の代表的なものに「顧客満足度」があります。これは、自社の商品やサービスについて常に気にかけて、新製品が出れば真っ先に試してくれるような、企業と購入者の信頼関係と言い換えることができます。顧客との強い信頼関係があれば、仮に何かの問題があったとしても事情を説明し丁寧な謝罪をすれば受けいれてくれる可能性が高いといえます。そのような顧客を可能な限り増やすことが企業の目的でもあり、その存立を担保するものとなります。この観点から新製品の立場を考えると、まず顧客に新たな発見を与えるものです。また、その企業の製品やサービスを使い続けていることに喜びと誇りを持たせ、期待を誘引するものでもあります。既存商品を継続的に購入してもらうことも重要ですが新商品はさらに重要です。顧客に夢と希望を与え、生活に潤いをもたらす「恋愛」や「宗教的情熱」に近い効果があるからです。優良な顧客は製品やサービスの良さについて実感を込めて拡散してくれる役割も果たしてくれます。広告手法の中で最も効果的なものは「口コミ」だといわれています。製品やサービスを使った本人が実感を込めて「おすすめです」という言葉の力は何にも増して強力です。以上の理由で新商品開発に関しては、そのプロセスのすべての段階で「顧客の立場で考えられているか」について、チェックを繰り返す必要があります。(※1)

差別化のすすめ・他社製品とどのような違いがあるかを明確にする

“市場には同じような機能を持った製品やサービスがあふれています。それぞれに、他社との差別化を主張するのですが、一般に買い手の目は売り手より厳しいものです。売り手が主張するほど「明らかに差がある」と買い手には感じられないこともあるでしょう。実際のところ新商品開発の段階で正しいアプローチを取らなければ、顧客が納得するような差別化は困難といえます。営業や広告の段階で差別化を図る手法もありますが、効果は一時的なものに留まることが多い傾向です。もし、この手法を採用するのであれば、長期的視点からの費用対効果を事前に十分検討する必要があります。すぐに飽きられないような本質的な差別化は、やはり商品自体の企画段階でのクオリティーコントロールによってなされるべきでしょう。では、どのようなアプローチが可能でしょうか。差別化には、主に3種類のアプローチがあるといわれています。第1の手法は「カイゼン型のアプローチ」です。これは、既存の製品やサービスを部分的に改良・改善するものです。模倣する対象はある程度市場に受け入れられており、ほぼ確実な売り上げが見込めるため、堅実な方法ではあります。しかしながら市場で受け入れられているということは、自社以外にも模倣できることになり他社との競合は避けられません。多少の差別化を実現したとしても、遅かれ早かれコモディティ化してしまい価格競争に巻き込まれていきます。そうなると、結果的には体力のある大手の寡占状態に落ち着きます。「他人のフンドシで相撲を取る」ということわざがありますが、競争優位性の確保という観点からは、他人が設定した土俵で勝負するのも避けたほうが無難です。次に第2の手法は「サプライズ型のアプローチ」です。市場に存在しない新規性を打ち出すものです。新しいアイディアが要求されるときに、このアプローチに陥りがちですが、新商品開発では商業的価値を持っていることが前提です。いかに面白くでも、売れなければ話になりません。新規性と市場性が両立するようなものであれば可能性はあります。ただし、どのマーケットでもボリュームゾーンにいる人々は保守的な選択をするものです。売り上げという点では一時的には伸びたとしても、顧客の創造には結びつかない可能性が大きいでしょう。最後に、第3の手法は「アマノジャク型のアプローチ」です。これは、簡単にいうとマーケット・トレンドの逆張りをする方法です。新製品開発の理想は、マーケットのニーズがあるにも関わらず、まだ存在しない製品やサービスを提供することにあります。それが実現すれば爆発的なヒットになり先行者利益を享受できる可能性があります。そのためのひとつの方法として、あえてマーケットの動向から離れてみるわけです。「常識を疑う」といってもよいかもしれません。この方法の注意点は、第2のアプローチに陥らず、逆張りが新しいマーケットを生む方向に誘導する点にあります。
(※2)

新商品の具体的なテーマを練り込んでみる

新商品開発のテーマについて検討するには、主に次の4つのポイントをおさえる必要があります。まず「ニーズ情報」です。買ってもらえるための商品を作るわけですから、購買欲求が高まり、顧客になってもらえるような条件をまずクリアすることが大前提です。次に「自社技術情報」について分析しておきましょう。技術は差別化の最大の切り札になります。オンリーワンの技術であれば、テーマとしてそれを全面に出したほうがよいでしょう。自社技術がハード面の資産とすれば、「専門知識」はソフトに関わるリソースです。蓄積されたノウハウには、テキストや数式で表現される形式知だけではなく、技術者の頭の中や身体で覚えている暗黙知があります。後者についても正しく評価する必要があります。最後は「人材情報」です。どのように豊かな経済的・技術的リソースがあっても、開発を進めるのは「ヒト」です。理想的なテーマがあっても、その実現のための適材適所の人員配置ができなければ「画に描いた餅」に過ぎません。新商品開発テーマを考えるときには、誰が担うのかを常に意識するようにしましょう。(※3)

商品を開発するために必要なリサーチ力

コンセプトを詰める段階や試作品の制作・検証の段階、実際の商品とその価格や広告手法を検討する段階には統計的手法に基づいたリサーチを行います。それぞれの段階で開発を継続するかどうかの絞り込み判断の主要な指標として用いられます。商品リサーチにおける具体的な評価項目は主に次の4点です。「第一印象」は、ストーリーや機能などを問わない直感的な判断です。特に嗜好品の場合は最初の印象が良くないと購買選択対象からはずされるでしょう。「好意度・魅力度」は、好き嫌いの理由を特定することがポイントです。「目新しさ」は、流行に敏感なアイテムの場合は最重要の分析指標です。商品自体に新規性がなくても、ある程度はパッケージでコントロールできる場合もあります。「購入意向」は価格を提示して買ってみたいと思うかどうかを質問します。(※4)

販売価格に明確な根拠を持たせる

販売価格戦略には大きく分けで2つの考え方があります。「スキミング・プライス戦略」と「ペネトレーション・プライス戦略」です。「スキミング・プライス戦略」は、新製品導入段階から高価格を設定し、市場の浸透に合わせて価格を下げていく手法です。マーケティングの枠組みでは、画期的な新商品を購入するのは「イノベーター」と呼ばれる新規性に反応する顧客群といわれています。イノベーターは価格より新規性が問題なので高価格の設定が購買行動の制限要因になりにくい点に着目した手法です。「ペネトレーション・プライス戦略」は、その逆のアプローチで、最初は低価格で導入し、マーケットシェアを獲得した後に価格を挙げていくものです。コモディティ化が予想されるような市場では、最初にシェアを広げたほうが競争優位に立てます。大量に販売できればコストダウンが可能なので、低価格でも利益も確保できるでしょう。このアプローチは、プリンターなどの例に見られるように、製品本体ではなく消耗品や保守管理で利益を上げるビジネスモデルにも応用可能です。(※5)

商品の宣伝の仕方と顧客へのアプローチの方法

顧客の創造の可能性を考えると、最も効果的な方法は「口コミ」です。経験者の言葉ほど影響力のある広告手法はないといわれています。しかしながら、それはある程度市場に流通した後に初めて可能になる手法なので、ここでは新製品発表に際して可能なものを検討しましょう。まずはリリース前の情報発信を行います。プレスリリースやソーシャルメディアでの発表、セミナーや試供品配布などで商品の広知性を高めます。美しくデザインされた紙媒体での広報活動も重要ですが、現代ではネットでの情報発信も不可欠です。特にスマートフォンからのアクセスに対応したレスポンシブデザインのサイトにも十分な投資が必要です。商品リリース後には予算に応じてキャンペーンを行います。潤沢な予算があれば広告代理店に一括して委託する方法が無難でしょう。限られた予算であれば、ネットの効果的な利用をおすすめします。特に若年層や女性向けの製品やサービスであれば、スマートフォン向け情報発信の成否が、直接売り上げに関係する場合も多いため丁寧な情報発信を心がけましょう。(※6)

顧客が受けるメリットを最大限にアピールする

“新商品は、企業と顧客をつなぐコミュニケーション・ツールとみなすことができます。
企業が顧客の立場に立ち、その隠れたニーズを掘り起こし、具体的な商品という形にして、市場で提案しましょう。顧客はその提案を精査し納得がいけば購入します。顧客は商品の使用後にニーズを十分に満たしたものであったのかどうかについて再購入するどうかという形でレスポンスします。それが市場に反映されて商品のライフサイクルが決まります。ニーズを満たしたものであれば、ロングヒットになります。企業にとって、新商品の開発と販売には大きなリスクが伴いますが、常に顧客の立場に立ってプロセスを進めれば、それに応えてもらえるはずです。新商品開発の際には、このコミュニケーション・ループを意識すれば顧客の信頼を得られることでしょう。

参考URL
(※1)http://www.aiship.jp/knowhow/archives/20085
(※2)https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=6367 (※3)http://www.kpcnet.or.jp/kigyo/ms/06/gijutsu2.pdf
(※4)https://www.blwisdom.com/marketing/series/mktresearch/item/1922-07.html (※5)http://marketerthinking.com/kihon/shinseihinnkakaku.html
(※6)https://www.benchmarkemail.com/jp/blogs/detail/5-must-know-marketing-tips-for-launching-a-new-product-or-service”